パラサイト考察第2回~”匂い”について~
さて、前回の予告通り、パラサイト考察の続きを行っていきたい
今回は”匂い”について
a)”半地下の匂い”とは何を指すのか?
b)なぜ、”匂い”なのか?
を考えていきたい
a)"半地下の匂い”は何を指すのか?
→これは簡単だと思う。半地下とはまさに、物語のはじめにも出てくる通り、
地上に立っている家ではなく下水道や地面の高さに窓があるような家で暮らしている
人たちに染みついてしまった匂いのことで、”貧しさ””格差”の象徴として
考えてよいだろう。地上の家で暮らしている人たちにはつきようがないものであ
り、それゆえ、半地下一家と地上に住む一家を区別してしまうものであり、
最終的にはギテクがドンイクを襲った原因にも繋がっていたものだろう。
ここの匂いについては、ダソンが最も早く察知し、ダヘが最も鈍感であったこと
も興味深い。ここについては後程取り上げる。
b)なぜ、”匂い”なのか?
→映画の監督あるいは制作者に意図があるかはわからないが、格差や貧しさの象徴を
”匂い”に表現したことに意図はないのだろうか。真意はもちろんわからないが、
次のようなことを考えてみた。”匂い”というのは、通常受動的に知覚するもので
ある。私たちは通常、誰かに言われるか、もしくは、何かしらの違和感を感じない
限り、意識的に匂いに注意することはない。つまり、無意識的に知覚してしまう
ものなのである。ということは、この映画における匂いが象徴しているものー
”貧しさ””格差”他人との隔たり”ーについては、いくら意識的に
”気にしないようにしよう”と言葉に出したり、行動に出したりしようとしても、
それを完全に排除することができない。ここに格差を無くしたり、格差について
考える難しさがある、ということがここでは言いたかったのではないのだろうか。
最後のシーンで、ギテクがドンイクを襲ったシーン、ここにもこのメッセージが
隠されていると思われる。完地下の男がギジョンを襲い、それを見たダソンが
倒れてしまった。ドンイクにとっては一大事であり、一刻を争う重要な場面である。
ギジョンのことを無視し、ギテクに車のカギをよこせと言うほど切羽詰まっている
にもかかわらず、そこでも半地下の匂いに顔をしかめているのである。
つまり、身分関係なく、お互いの一大事で、利害関係なく助け合わなければならない
もしくはそこに目を向けている場合ではないときでさえ、そのときでさえ、無意識に
半地下の匂い=”格差”を我々は感じずにはいられない、そういうメッセージを
投げかけているのではないだろうか。
自分もこの間、あるコミュニティの人と会話する機会があり、そこでの余りの
考え方の違いや差に驚いて、しばらく唖然として何も話すことができなかった。
(もちろん、どちらがいい、ということではないし、自分の方が上だった、
と言いたいのではない。(差を感じてしまうことと、お互い無意識で相手より
自分が上だと思ってしまうことが問題なのだ))
日常的に、我々は無意識に他人との差を感じ、引いてはそれを何かしら
外面的な態度に出してしまい、それも相手が何となく感じ取り、それが積み重なる
ことで壊滅的状況を招く、なんてことはどこの誰にでもある話だと思う。
ここまで書くと、希望がないような気もするし、自分もそう感じていたのだが、
他の方がされていた考察でとても素晴らしいものがあった。
それはダヘとギウについてである。ダヘは唯一といってよいほど、”匂い”に対して
気づいていないと思われる。ギウとあれだけ近距離で長時間いるのにも関わらず、
である。それはなぜかというと、恋をしていたから、だと考察していた方が
いらっしゃった。恋による盲目性、あるいはそれに付随する相手を無条件で受け止める愛(こう書くと、”匂い”には気づいていたが、受け止めていた、ということになるのだが)が”匂い”、つまり”格差”を乗り越える鍵、希望となるということだ。
みんなで愛を持とう!なんてそんなクサい台詞は口が裂けても言えないが、
ここから先は皆さまにお任せすることにして、この話を終える。